コンサルで働くデータサイエンティストの日記

某コンサルティングファームで働いているデータサイエンティストの日記です。

ロジカルシンキング -論理的な思考と構成のスキル- を読みました

書籍を読んだ理由

コンサルティングファームで働くことになったため、 コンサルタントに必要なビジネススキルを会得するための書籍を読みました。 読んだ内容をまとめておくことで知識の蓄積と振り返りに活用しようと思います。

当初バーバラミントの考える技術・書く技術を読もうとしたのですが私には難解過ぎたので、 エントリーレベルに当たる本書籍を読み、まずはロジカルシンキング の全体像を把握することにしました。

本書の概要

ビジネスにおけるコミュニケーションのノウハウが言語化されている書籍である。 ロジカルシンキングという定性的なスキルを言語化できていることは素晴らしいと思う。

ロジカルに物事を考え、人に伝えるための技術が大きく分けて3つ紹介されており、 章末には演習も含まれているためエントリーレベルの書籍としてはおすすめの一冊である。

まとめ

ロジカルシンキングに必要なことは結論を先に示し、 結論が導き出された理由を漏れなくダブりなく(MECE)説明できていることである。

加えて結論とそれを構成する各要素との間で整合性が相互に担保されていることが重要である。 整合性を担保するために活用する思考スキルがSo What/Why Soである。

MECEとSo What/Why Soを用いて相手とコミュニケーションをする際に、 並列型と解説型とに大別される2つの論理パターンを適材適所に用いることが有効である。

MECE

MECEとはMutually Exclusive and Collectively Exhaustive の略語であり、 「ある事柄を重なりなく、漏れのない集合体として捉えることを」意味する。ビジネスにおけるコミュニケーションでは課題に対する結論を最初に示すことが大切であるが、導き出された結論を構成する要素をMECEに整理すると、ロジカルなコミュニケーションが可能となる。

MECEは言い換えると結論の構成要素をいくつかの観点でグルーピング化する技術である。 例えば会社や業界については3C/4Cフレームワークを、マーケティングについては4Pフレームワークを活用するとMECEに結論を整理することができる。他にも性別や価格帯、目的別など色々な観点でMECEに分割することが可能だが、一般に分割する数は2〜4程度が好ましいとされている。5つ以上になる場合は、現状のグループをもう一つ上位のレイヤーでグルーピングできないかを検討してみたり、別の観点でグルーピングできないかを検討することが重要である。

So What/ Why So

So What/Why Soは結論とそれを構成する各要素との間で整合性が相互に担保されていることを保証するための思考スキルである。 So What/Why Soを実施することで議論での「話飛び」を防ぐことができて一貫性のあるコミュニケーションができる。

So Whatは日本語にすると「だから何?」で、各構成要素を組み上げると当初論じた結論につながることを担保する思考スキルである。 X社の状況を説明するときにMECEを使って結論をA、B、Cの3要素に分けたとして、 これら3つを統合すると結論に帰結するかを自分自身に常にSo What?することで確かめられる。

Why Soは日本語にすると「なぜそうなの?」で、結論を説明するための各要素を導き出すための思考スキルである。 例えばX社の状況を「X社は競合他社Y社の台頭と市場のニーズの変化によって、既存のビジネスモデルでは今後のマーケットポジションが危ぶまれる。」という結論としたときに、自分自身にWhy So?することで結論の構成要素となるA、B、Cを導き出すことができる。

またSo What/Why Soには「観察」と「洞察」の2種類が存在する。 「観察」のSo What/Why Soはある事実を示す根拠(インタビューや統計データ)があるときに、 それを要約する際に活用する思考スキルである。 根拠からそれを要約する結論をSo Whatすることで導き出し、 導き出した要約にWhy Soすることで要素分解できる。

「洞察」のSo What/Why Soは「観察」によって導き出された結論(要約)から、 洞察される事象を論じるための思考スキルである。 得られた根拠を深掘ると何かしらの仮説が導き出されるはずである。 その仮説は思考パターンとしては要約された結論から自分自身にSo What?することで導き出されている。 またその仮説に対して自分自身にWhy So?することで、何故その仮説が導き出されたのかの根拠を「観察」によって導き出された結論や、 話し手と受け手との共通認識などから明らかにすることができる。

論理パターン

MECEとSo What/Why Soを会得すると、結論→理由と論じるための一連の思考スキルが身につく。 その後本書で論じられている2つの論理パターンに当てはめてストーリー展開をすることで、 自分の期待する相手の反応に合わせて議論を進めることができるようになる。

論理パターンは大きく分けて「並列型」と「解説型」に大別することができる。 「並列型」の論理パターンは、相手とのコミュニケーションである事象を簡潔に説明する際など、「相手の理解」を促進することが目的の場合に有効である。例えばX社の実情を伝えるために、まずX社の状況を表すまとめ(結論)を述べ、その後4Cフレームワークに基づいてMECEに詳細を説明をする場合に用いられる。このケースの場合、理由を示す4つのグループに順序関係はなく、全てのグループは結論に対して並列に存在している。「並列型」の論理パターンは相手の理解を促進するのに役立つ一方で、何故そのような理由になったかを示す要素が排他されているため、コミュニケーションの目的が「議論」や「合意形成」である場合には適切ではない。

「解説型」の論理パターンは、「並列型」と異なりコミュニケーションにおいて「議論」や「合意形成」が目的である場合に有効な手法である。「解説型」の論理パターンは、結論に対しての要素分解に「型」が存在する。その型とは

  1. 事実
  2. 判断基準
  3. 判断内容

である。

最初にある結論に対して、両者の中で議論の余地がない事実について述べる。ここで課題に対して取りうる可能性のある選択肢も示す。次に提示した事実について課題解決のための複数の案の中から何を選択するべきかを判断するために必要な基準を述べる(コスト、納期、満足度など)。最後に提示された選択肢に対して、2で提示した判断基準に基づきどれを採用するべきかについて論じる。ここで結論づけた内容が冒頭の結論とリンクする。

このケースは判断基準と判断内容において話し手の主観が入ることとなる。そのため受け手には話し手の主観について「議論」や「合意形成」を促す必要がある。よって事実についての説明ではなく自身の考えを相手に伝える際に有効な論理パターンであると言える。一方で「並列型」と比べて「解決型」はより受け手に対して脳のリソースを使わせる手法となるため、話し手と受け手の間に複数の議題がある場合などでは、打ち合わせの回数を分割するなど相手のリソースを考慮したファシリテーションも重要となる。また、1つめの「事実」については話し手と受け手との間で過不足がないことや、事実が確実に正しいことが前提となっているため、「解決型」を採用する際は事実確認を綿密に行うことが大前提となる。

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